作成日:
2025/01/20
更新日:
2025/10/17
新課程初年度となった2025年度の共通テストが、2025/1/18(土)・1/19(日)に実施されました。
この記事では、共通テスト2025の数学ⅠA(「数学Ⅰ・数学A」)と数学ⅡBC(「数学Ⅱ・数学B・数学C」)を、実際に全て解いてみた上で、例年と比較した問題の傾向や、その傾向を踏まえた今後求められる対策法についてご紹介します。
共通テスト2025の数学ⅠA・数学ⅡBCの概要を知りたい方や、共通テストの対策法になかなか自信を持てない方に対して、参考になれば幸いです。
共通テスト2025数学ⅠAの講評
全体の構成は、文科省が公開している「令和7年度試験の問題作成の方向性、試作問題等」に沿っており、整数問題が削られた全4問で、全て必答問題でした。新課程になり追加されたテーマは全て出題されていた点は特筆すべきでしょう。
問題形式としては昨年までの共通テストを踏襲し、日常の事象(噴水、くじ...etc)を題材とした問題や会話文を含む問題が出題されましたが、会話文は若干短めで、その点では解きやすくなっていたように思います。(年々削られている気がします...)
例年通り、それぞれの大問の最初の方では得点しやすい設問もありつつも、ところどころで誘導が見えにくく、引っかかるポイントもありました。
では、大問ごとに詳しく見ていきましょう。
第1問 「数と式」「三角比」
[1] は「数と式」の分野からの出題でした。因数分解は問題の指示に乗っていけば問題ないと思いますが、二次方程式の解についての、必要条件・十分条件の考察が若干難しかったです。「xの2次の係数が0ではないときでも、重解になって、解が1種類しかない場合がある」というのが盲点になりやすいポイントでした。
このように、「必要条件・十分条件」については、大問として問われることは無いですが、ところどころに絡めて出題されます。論理は数学力の根幹となるので、大事にしてほしいというメッセージが現れています。
そして、[2] は「三角比(図形と計量)」の分野からの出題で、円の知識も絡んでくる応用問題でした。自分で図を描きながら考察しないと、何をやっているかわからなくなるような問題でした。日頃から、図を書いて考える癖をつけておくことが大事でしょう。
(2) で、三角形QABの外接円が入ってきてから、ギアが上がります。外接円の半径は勘で答えたくなりますが、ここで上の太郎さんと花子さんの会話がヒントになっていることに気づけると良いです(太郎さんと花子さんの会話は基本的に誘導になっているので、長いからといって読み飛ばさないようにしましょう)。外接円の半径R1とR2が全く同じように計算できることに気づけると、時間を短縮できます。
このように、共通テストでは一から計算し直す時間は無いので、うまく計算をサボれないかを常に考えることが大切です。(今回の数学1Aや数学2BCでは、このような工夫がカギとなる問題が多かったです)
第2問「二次関数」「データの分析」
[1] の「二次関数」の問題は、いつも通り日常的な事象が題材でしたが、リード文は短めで解きやすかったです。一方で、二次関数の表し方をうまく工夫しないと時間がとられる問題ではありました。x軸との交点がわかっている場合や、頂点の座標がわかっている場合で、どのように関数を表すと楽ができるか、普段から考えて解いているかどうかで差がつきそうです。また、対称性などの図形的な考察もカギとなる問題でした。
[2] の「データの分析」の問題では、さまざまな知識がまんべんなく問われていました。都道府県ごとの実際のデータを用いた考察から、変量の変換を数式で考える問題まで出題され、公式を覚えるのみならず、それを定義から導出できるかという点も含めてしっかりと問われていました。普段の勉強では、必ず定義をおさえた上で、公式の導出もできるようにしておきましょう。
新課程で新しく登場した外れ値についての考察も登場していましたが、外れ値の定義は問題で与えられていました。しかし、教科書にも載っている内容ですので、一応知識として押さえておくことが望ましいでしょう。また、新課程で加わった仮説検定も問われており、試作問題と同様、簡単な設定をもとに正しく仮説検定の概念を理解できているかが問われていました。
第3問「図形の性質」
「図形の性質」からは、空間図形が出題されました。いきなり直線と平面の関係の話から始まったので、面食らった受験生も多いかと思いますが、図を見ながら、書いてあることをそのまま読み解いていけば問題ないかと思います。その後は、球まで登場し、その切り口(円となる)で相似や方べきの定理を考える問題となり、少し難易度が高い(得意かどうかで差がつきそうな)問題でした。
最後の、三平方の定理の逆、直線と平面の関係(垂直条件など)といったテーマは、共通テスト対策ではそこまで触れていなかった人も多かったはずで、普段からしっかり勉強しているかの地力が問われていました。
第4問「場合の数と確率」
「場合の数と確率」からは、新課程で登場した期待値が丸ごと大問として出題されました。ルールさえ理解できれば、誘導に乗ってスムーズに解いていける問題でしたが、期待値の計算に必要な、確率変数がそれぞれの値をとる確率を求めにくく感じた人も多かったはずです。「条件付き確率なのか...?」などと深読みしてしまうと混乱してしまう問題で、普段から確率の概念を正しく理解して演習しているかが問われる問題でした。
共通テスト2025数学ⅠAの講評まとめ・難易度は?
このように、共通テスト2025の数学ⅠAは、これまでの共通テストの数学ⅠAと同様に、公式に当てはめておしまいではなく、知識を土台として思考力を問う傾向にありました。
リード文も短めで、うまく誘導に乗ることで計算を省ける問題なども用意されていたため、共通テストの経験を積んでいる人であれば十分高得点が望めるセットだと感じましたが、昨年に比べて、
大問2で、[2] の三角比の問題が重ためであったこと
大問3の図形の分野で、冒頭から空間図形が出題されたこと
大問4の確率の分野では、問題の設定の把握や期待値の計算につまづいてしまうと、大問ごと失点してしまう可能性があったこと
といった変化があったことを踏まえると、個人的な体感としては難易度は昨年並み〜やや難化と感じました。
また、新課程で登場したテーマが全て出題されていた点も特徴的でした。共通テスト形式での演習の重要性は高まっていると言えるでしょう。

共通テスト2025数学ⅡBCの講評
数学ⅠAと同様に、こちらも全体の構成は文科省が公開している「令和7年度試験の問題作成の方向性、試作問題等」のままでした。
問題形式としては昨年までの共通テストを踏襲し、日常の事象(水草の増え方など)や会話文の混じった問題も出題されたものの、数学1Aと同様、文章の量はそこまで多くなかったように感じました。
では、大問ごとに詳しく見ていきましょう。
第1問「三角関数」
「三角関数」からの出題で、sin = sin の三角方程式を、角度比較で考えてみようという問題でした。問題集などでもよく出てくるテーマなので、解いたことがある方や単位円を用いて考えるクセがついている方にとっては、そこまで引っかかるところはなかったはずです。最後にいきなり cos の話が登場しますが、うまく誘導に乗って、同じように考えていくことが求められました。
第2問「指数・対数関数」
「指数・対数関数」からの出題で、常用対数についての問題でした。水草の増え方を考察する問題で、複利計算と近いような話なので、似たような問題を解いたことのある人も多かったと思いますが、「条件」や「方針」が何を言っているのかを、正しく理解して数式に落とし込む必要がありました。
このように、共通テストでは、書いてある方針を正しく理解し、その誘導に沿って進むようにすることがとても重要です。常用対数表の細かい読み取りも求められ、見た目以上に意外と時間がかかる大問でした。
第3問「微分・積分の考え」
「微分・積分の考え」からの出題で、3次関数と、その導関数である2次関数を、融合的に考察する必要のある問題でした。いつものような面積などの重たい計算は無く、わかってしまえば特に引っかからずに解ける大問でしたが、関数や導関数のグラフや符号の意味をしっかりと理解して問いているかが問われる問題でした。
第4問「数列」
「数列」からの出題で、今年はシグマを用いた格子点の個数を求める問題でした。問題集などで似た問題を解いたことのある人も多いはずですが、端点を含むかどうかの細かい処理に気を使う必要があります。最後の二次関数の設定では若干難易度が上がり、恒等式の知識も必要となる分野横断型の問題となりました。共通テストでは、このような分野横断型の問題が増えているのも特徴です。
第5問「統計的な推測」
「統計的な推測」からの出題で、標本平均の分布や、母平均の区間推定の幅の考察といった定番のテーマが問われており、直近の出題よりは解きやすかったように思います。後半では、数学ⅠAノデータの分析と同様、仮説検定が問われていましたが、内容は凝ったものではなく、母平均の推定がテーマとなっていたため、概念を理解できていれば問題なく取り組める問題でした。
第6問「ベクトル」
「ベクトル」からは、空間ベクトルが出題されました。球が出てきて、パッと見難しそうな問題ですが、誘導に沿って式を立てれば、単なる連立方程式の問題となります。とはいえ、計算力が要求されるセットで、特に後半では文字や因数分解を含んだ重たい計算が待ち構えており、頭が疲れてきた頃に取り組む問題としては、かなりボリュームがあったと思います。共通テストになり思考力が問われているとはいえ、随所でこのような重たい計算が要求されるため、引き続き計算力は大事でしょう。
第7問「平面上の曲線と複素数平面」
「平面上の曲線と複素数平面」からは、複素数平面のみの出題となりました。複素数の差の商の偏角を考える問題から、直線が垂直となる条件まで、理系の方にとっては、二次試験の対策でよく出てくるテーマが並んでいました。条件が問題に書いてあるなど、かなり親切な誘導がついていましたし、式変形もよくあるものですので、普段から二次試験に向けて複素数平面を勉強している理系の方であれば、取り組みやすい大問だったと思います。
共通テスト2025数学ⅡBCの講評まとめ・難易度は?
このように、共通テスト2025の数学ⅡBCは、これまでよりも大問の数は増えていますが、その分、1つ1つの大問の中身は典型的なものが多くなっており、昨年と比較して、
大問3(昨年は大問2)の微積分が若干軽めであったこと
大問4の数列が軽めになっていたこと(昨年は漸化式の考察が難しかったが、今年は計算がメインであった)
大問5(昨年は大問3)の統計が、解きやすいテーマであったこと
を踏まえると、普段の演習量が点数に反映されるような取り組みやすいセットで、個人的な体感としては難易度はやや易化だと思います。
とはいえ時間も厳しいことには変わりなく、常用対数表や正規分布表など、細かい表から値を正確に読み取らないといけなかったり、ベクトル分野では重たい計算が要求されたりと、引っかかるポイントも用意されていて、一筋縄ではいかない試験でした。
共通テスト数学の対策法
それでは、ここまでの講評を踏まえて、今後共通テストの数学に対し、どのような対策を行っていけば良いか、考えてみましょう。
「共通テスト型の問題」と言われつつも、上で紹介してきた通り、表面的な設定や誘導を理解してしまえば、あとは普段の問題集などで出てくる問題に帰着するものが多いので、まずはしっかりと各単元のテーマを定着させることが最優先となります(共通テスト型の演習ばかりやっていても、なかなか点は上がらないでしょう)。
その土台がある上で、共通テストの形式に慣れていく演習期間を十分にとることも必要となっています。共通テスト開始時に比べると、会話分や長いリード文は減ってきているとはいえ、「設定が言いたいことを正しく理解し、問題が指示している誘導に乗る」という思考の流れや、その誘導にうまく乗ることで計算を省略していく流れは、引き続き求められていますし、これらは共通テストに特有なものであるため、一定程度の慣れが必要です。
そのため、特に現役生については、各単元の定着をいかに早く終わらせ、共通テスト形式の演習の時間を確保するかが1つの重要なポイントとなります。新課程となり、出題範囲が増えてしまっている状況ですので、この重要性はますます高まっています。
また、共通テストが求める思考力を身につけるには、「この問題はこの公式」というように、学校のテストを一夜漬けの暗記で乗り切るような学習ではなく、普段から、公式の証明や、「なぜこの問題はこの公式で解けるのか」「他に解き方は無いか」といったことを妥協せず考えていく学習を積み重ねることが重要で、そうするとスムーズに共通テストの誘導にも慣れていけます。
このような思考力は一朝一夕では身につかず、地道にやっていくしかないのですが、共通テストは小手先のテクニックでは太刀打ちできない試験となっており、抜け道はありません。とはいえ、単なる暗記ではなく考える勉強をしていると、さまざまな発見があって、学ぶこと自体が面白くなってくるはずですので、そのような学びを目指すのが理想でしょう。
共通テスト対策なら「Dr.okke」
新課程の共通テストを攻略するには、上でも紹介した通り、学んだ内容をその都度しっかりと定着させ、いかに早めに共通テスト型の演習に移れるかが大事になってきます。
そのためには、「テキストを何ページ進めたか」ではなく、実際にテストなどで解いて、「どれくらい定着しているか」をしっかり確認しながら学習を進めることがとても重要です。
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授業や宿題で小テストを配信し、定着度をタイムリーに把握
映像授業や参考書の学習後に、類題で確認テストを実施し、定着度を確認
受験に向けて、単元をシャッフルしたテスト(ミニ模試)を定期的に実施
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執筆者
株式会社okke代表。ラ・サール中高、東京大学工学部計数工学科卒。
財務省に勤務したのち、アメリカ・UCLAでMBAを取得し、能動的に学ぶ人を社会に増やすべく、okkeを起業。
Dr.okkeのコンテンツを作っています。




